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おんみつ蜜姫 (新潮文庫)
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| ジャンル: | 歴史,日本史,西洋史,世界史
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| 人気ランキング: | 268577 位
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お気楽なお姫様もの
今日紹介するのは、ちょっとお気楽な江戸時代を舞台にしたお姫様冒険ものです。このお姫様ものというジャンル、昭和初期までは結構はやっていたジャンルらしいんですが、「あんみつ姫」以降廃れていってしまったようです。どんなジャンルかというと、おてんばなお姫様がお城を飛び出して城下や諸国を漫遊し、その土地土地で巻き起こる事件を鮮やかに解決するというもので、すごくおおざっぱに言えば、お姫様版の「水戸黄門」のような話です。ここに、姫君ものですから、姫の美貌やきっぷに惚れた部下や仲間が増えてきたり、心配性の爺やがでてきたりします。
この「おんみつ密姫」もそういうお姫様ものの系譜の一つです。
主役は豊後の国の温水藩の姫君、密姫。
彼女はてんからお転婆すぎる御姫さまで、おかげで普通大名の娘というものは江戸藩邸で暮らさなければならないものですが、あまりにお転婆ということで「病気のため」と称した豊後で育てられました。参勤交代で父が江戸にいるときも、ひたすら野山を駆け巡り馬も乗り回す活発なお姫様です。その彼女と、父上でもある藩主が遠乗りを楽しんでいたときに、父親が暗殺されそうなったところから物語は始まります。
金比羅売りの変装で父に近づいた殺し屋。間一髪でそれを姫が撃退したまではよかったのですが、田舎の小藩の大名、とりたてて命を狙われるようなことは何もないはずと姫は首を傾げるのですが、その夜に父上から聞かされた話にびっくり。父は、四国の風見藩の藩主と藩の合併をひそかに計画していたのだ、そして、密姫自身をそちらに嫁として送るつもりだったのだ。すわ幕府の隠密のしわざかと思い立った姫君は、刺客たちをやっつけて、さらには時の将軍様である第8代将軍の徳川吉宗に幕府に暗殺をやめさせるため旅に出ようとします。もちろん無茶苦茶無謀なお話ですが、とめるかと思いきや母の甲府御前は密姫のたびのおともに愛猫のタマを貸し与えます。
何と,タマこそは母の甲府御前におつきとしてくだってきた忍者が仕込んだ忍び猫だというのです。半信半疑ながらも猫をつれて旅に出た密姫は見事目的を達することができるのでしょうか?
まるで絵本のように荒唐無稽なお話ですが、著者の米村圭吾の語り口調の文体がとても柔らかくまるで講談を聞いているかのように楽しめます。米村氏は別の姫君のシリーズも出していますが、語り口は年を重ねるごとに軽妙で軽みのあるものになってきています。特にこ作品では、もともとが新聞連載という形式をとっていたためさらにそのあたりが強化されており,短い合間にハラハラドキドキと彼の語り口の続きを待つように本が読めます。ただ、内容のほうはおおむねはさきほど話したような荒唐無稽な感じに聞こえますが、実はしっかりとした時代考証の上でお話は「天一坊事件」につながっていきます(天一坊事件についてはさまざまな本がこれまた赤穂浪士の討ち入り本のような数多くでておりますので、興味があるかたはまた調べてみて下さい。いろいろな説が乱れ飛んでいてこれはこれでまた面白い歴史上のお話です)。あの事件は本当はこういうことではなかったのか、というのが虚実を織り交ぜながら語られます。
口当たりや外見はあくまでソフト、お菓子のようですが、中身は実は政治の裏の駆け引きを描いた作品というのがこの本です。もちろん、お姫様小説ですからそのまま読んでも冒険活劇風にとても楽しく中学生くらいでも読めますが、深読みするとさらに読み込めるという構造です。
たまには、こういう作品もいかがでしょうか。
シリーズ化希望!
九州は豊後温水藩二万五千石の藩主 乙梨利重が遠乗りに出かけている途中に刺客に襲われる。幸いケガもなく済んだのだが、利重の娘で暴れ姫の異名を持つ蜜姫は大興奮。若侍に姿を変え、忍び猫のタマをお供に藩を出奔、大物には見えない父がなぜ狙われたのか?誰が刺客を差し向けたのか?探索の旅に出る。将軍様の御落胤 天一坊事件という幕府を揺るがすような大事件を題材にしたおもしろ痛快時代小説です。
『風流冷飯伝』や『退屈姫君』シリーズよりちょっとだけシリアスさが増しています。が、そこは作者のこと、蜜姫を筆頭に、忍者の笛吹夕介、船乗りの五平に雲吉、新陰流の達人柳生厳也など魅力あふれる登場人物たちに、巧みな語り口が醸し出すホンワカさなどはいつもの通り。また、前に挙げた作品より少し前、八代将軍徳川吉宗の時代が舞台となっているのですが、風見藩はもちろんのこと、今までの作品で見知った人物たちのご先祖様らが大活躍するといった、ファンにはなんともうれしい内容。
ぜひシリーズ化してほしい一作です。
新潮社
面影小町伝 (新潮文庫) 紀文大尽舞 (新潮文庫) 退屈姫君 恋に燃える (新潮文庫) 退屈姫君伝 (新潮文庫) 風流冷飯伝 (新潮文庫)
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